日々、ニュースを見ていると、交通事故のニュースが絶えることがありません。
平成26年に交通事故で亡くなった人は4,113人、1日平均で11人、2時間に1人がなくなっている計算です。
どうりで、交通情報を聞いていても、事故の情報がいつもいつもあるわけです。
事故にあう可能性は、年齢に関係ありません。
そんな、事故にあって亡くなった方Aさんの相続について、見ていきましょう。
ある日、交通事故にあい、帰らぬ人となってしまった夫
家族
亡くなった方をAさんとします。
Aさんは、結婚していましたが子供はいなく、ご両親なども亡くなっています。
弟が二人います。
相続財産
自宅とその土地:立地条件がよく、評価額は合わせて5,000万円
預貯金:1,000万円
相続できる人は?
この場合、奥さんとAさんの弟であるBさん、Cさんの3人です。
どうなった?
遺産総額としては6,000万円ほどのため、相続税の申告には至りませんでした。
Aさんの弟達のBさん、Cさんとの付き合いはあまりなく、それぞれに独立して生計を立てていました。
ですので、Aさんの遺産を奥さんがすべて引き継ぐことに同意してもらえるものと思っていました。
ところがです。
四十九日の後、Bさん、Cさんより遺産分割についての話し合いの申し出がありました。
席を設けて話し合いを始めたところ、Aさんの遺産について、それぞれ法定相続分である1/8を取得することを主張してきました。
「まさか、なんで?」
交通事故で夫を亡くして、手続きがいっぱいあり、
やっと一息ついたときに、そんな話が旦那の弟達から出るなんて・・・。
思いもかけぬ展開に、奥さんは唖然としました。
確かに、弟達には相続の権利があります
遺産総額が6,000万円ですので、弟達の法定相続分の1/8になる金額は、750万円ずつになります。
しかし、貯金は1,000万円しかなく、2人分には足りません。
また、自宅と土地を「共有」する方法もありますが、弟達はあくまでもキャッシュでの分割を主張していたいので、「共有」という話をしても受け入れられなかったでしょう。
仮に受け入れられたとしても、権利関係が不安定になるので、いい方法ではありません。
話し合いに疲れてしまった奥さんは、苦渋の決断をしました。
自宅と土地を売って、換金をすることにしたのです。
遺産分割後、奥さんは思い出も何もない新しいウチで1人ひっそりと暮らすこととなってしまいました。
弟達との縁が途切れたのは、言うまでもありません。
どうすればよかったのか?
このような親戚付き合いの場合、「遺言」を用意しておくべきだったと言えます。
もしも、遺言で「Aさんの財産はすべて奥様に相続させる」とあったら、弟達は「遺留分」がないので遺産分割を主張することはできません。
兄弟姉妹には「遺留分」の権利はありません。
「すべて奥様に相続させる」という遺言により、奥様がすべてを相続することができます。
ですので、奥様の生活は守られていたのです。
備えあれば憂いなし
これは極端な例かもしれませんが、遺言の有無で相続の展開が大きく変わるという事がわかっていただけましたでしょうか?
「備えあれば憂いなし」の言葉どおり、この場合は遺言1つでトラブルの回避ができたはずだったのです。
事前に手を打つことが大事なのです。
専門家に相談して、特に問題がないというのであれば、それに越したことはありません。
もし、問題があるならば、問題の発見が早ければ早いほど対策も打ちやすいのです。
もし、自分に万が一のことがあったら、弟達にも相続の権利があるということをAさんが知っていたら、年令に関係なく遺言をどうするかを考えていたはずです。
どうか「自分には関係がない」とたかをくくらず、一度シュミレーションしてみることが大事です。