通帳の提出を依頼されたら、見せなくてはいけません
どうして通帳の開示が必要か?
「お父さん」が「被相続人」(亡くなって相続財産を残す人)
「子供たち」「孫」を「相続人」とします。
本当は「お父さん」の貯金なのに、名義だけが「子供」「孫」の名義になっている貯金のことを「名義貯金」といいます。
この「名義貯金」は、「お父さん」の財産とされますので、相続財産に含めて相続税の申告をしなければなりません。
もし、申告漏れと指摘されると、この貯金を相続財産として加えて相続税を計算なおすことになります。
この「名義貯金」問題になるのは、「お父さん」のモノなのか?「子供たち」「孫」に贈与したものなのか?」という点です。
どこが問題なのか?
もし、「子供たち」「孫」に贈与された預金であれば、その預金は相続財産に含める必要がないためです。
ではそもそも、「贈与」の定義って何なんでしょうか?
そももも贈与とは何?
なんと!「贈与の定義」は、相続税法で定められていないのです。
「贈与の定義」は民法にあるので、相続税においても「贈与の考え方」をそのまま使っています。
では、民法にはどう記されているのでしょうか?
(民法549条)
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
つまり「贈与があった」という証明をするには、
1.「お父さん」の「あげるよ」という意思表示
2.「お母さん」「子供」「孫」が「もらいます」という意思表示
を形として残せばいいのです。
この2つが揃ってはじめて「贈与」という契約が成立します。
なので、「お父さん」が一方的に「あげるよ」と言っても、「お母さん」「子供」「孫」が「もらいます」という意思表示をしなければ、贈与は成立しないのです。
例えば、「お父さん」が「子供」「孫」名義の通帳を作って貯金をしていとしたら、「子供」「孫」がこの口座の存在を知らなければ、「お父さん」から「子供」「孫」への贈与は成立しません。
ちゃんとあげる側の意思と、もらった側のもらったという認識が必要なのです。
どうやって名義預金かどうかの判断をするの??
単に名義だけが「子供」「孫」の「名義貯金」で、本当の所有者は「お父さん」だと判断されると、この貯金は相続財産に含まなくてはなりません。
「そんなことどうしてわかるの?」
税務調査官は、次の「3つがポイント」を見ています
1.「お父さん」と同じ印鑑を使っている
同じ印鑑だと
「口座は誰が開設したのか?」
「口座をお金を入れているのは誰?」
「口座を管理しているのは誰?」
ということになってしまいます。
2. 通帳や印鑑を「お父さん」が保管している
「お父さん」が通帳や印鑑を管理していると
「子供」や「孫」は実家を離れて生活しているのに、実家近くの金融機関に預金口座あるのは不自然である。
3.贈与の事実があるのか?
贈与の事実があるかどうかについて、次の確認が求められることが多いです。
・贈与契約書は作成してあるのか?
・贈与税の申告書を提出しているのか?
・財産をもらった人は、財産をもらったと認識しているのか?
税務調査官は当たり前ですが、税務調査のプロです。
「お父さん」の口座から多額なお金が出た形跡があるときは、その使途はます確認されると考えてください。
税務署は、その現金を何らかの資産を購入するための資金に使われているのではないか?
どうしたら 家族名義の貯金と言われないで済むの?
「贈与の事実があるのかどうか?」がわかればいいのです。
家族名義の貯金と判断されないように、やるべきことがあります。
1. 贈与があったことを証明する証拠を残しておく
「贈与契約書」を残してきましょう。
現金の受け渡しの場合、「手渡し」ではなく、証拠の残る「振込」がお勧めです。
2.財産をもらった人が、その貯金口座を管理する
「子供」「孫」贈与された財産がもらった人の財産であると言うためには「所有」していることを証明(所有権がある)しなければなりません。
「所有権がある」ってどんな状態?
・貯金を自由に使える
・貯金の利息を、口座名義人本人が受け取れる
貯金の所有権を証明するためには、口座名義人が自由にその口座を使うことができなければなりません。
そのため、通帳や印鑑は口座名義人が管理しなければなりません。
「子供のため・孫のため」が仇になる?!
「子供」や「孫」名義で口座を作ったはいいけど「お父さん」の印鑑を使っていたり、「お父さん」が通帳や印鑑を管理していることがほとんどです。
どうしてかというと「子供」や「孫」がお金を使わないようにというケースが非常に多いのです。
教育資金としては正解です。
しかし、相続・贈与を視野に入れているのであれば「お父さん」が通帳や印鑑を持っているのはNGです。
「子供のため・孫のため」というお気持ちもわかりますが、しっかりと準備しておかないと、後々相続時に問題おきることになってしまいます。