「あのさあ、あの、贈与税で2500万円まで非課税の制度って何て言うんだったっけな?」
相続に限らず、法律に関する用語は、漢字が続いているものが5文字以上になると、なかなか覚えられませんし、覚えたとしてもなかなか意味を理解するまでには根気が必要です。
「何だかお得だ!!」という印象は頭の残るのですが、単語が覚えられない、思い出せない・・・ということがありませんか?
その非課税な制度って、一体・・何なんでしょうか?
「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」です。
贈与税の非課税枠は2500万円です!
名前が分かりずらいことと連動して、仕組みも分かりずらいので、利用する人が少ないのが現状だそうです。
平成27年1月より、改正されました。
そもそも贈与税の種類は?
「贈与税」の課税には2種類あります。
財産の贈与が行われた場合、その翌年の3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。
1.暦年課税(れきねんかぜい)
毎年110万円までは申告不要・贈与税がかからないものです。
110万円を超したところから贈与税がかかってきます。
2.相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)
「相続時精算課税」を選択した場合、まず贈与時に贈与税を納めます。
贈与者が亡くなった際に、贈与財産を含めて相続税を計算し、この相続税とすでに支払っていた贈与税との差額を支払う(もしくは還付を受ける)ことになります。
要は「相続税の仮払い」のようなものです。
「相続時精算課税」の概要
「暦年課税」は「あげる側」(贈与者)と「もらう側」(受贈者)関係を問いません。
が「相続時精算課税」は違います。
一定の直系の親族の間の贈与に認められた「特例」なのです。
1.2500万円までは「贈与税が非課税」
2500万円までの贈与には贈与税がかからず、2500万円を超える部分に20%の贈与税が課されます。
贈与財産の種類、金額、贈与回数、年数に制限はありません。
2.「あげる側」(贈与者)と「もらう側」(受贈者)の条件が厳しい
「あげる側」は60歳以上の親または祖父母、「もらう側」は「あげる側」の推定相続人である20歳以上の子または孫です。
またあげる人(贈与者)ごとに使えるので、例えばお父さんからは暦年課税、お母さんからは相続時精算課税とすることもできます。
3.一度「相続時精算課税」を選択したら変更できない
「相続時精算課税」を選択した場合は、それ以降の贈与は暦年課税を適用できません
「やっぱり年間110万まで非課税の『暦年課税』に戻そう!」というわけにはいきません。
4.将来、相続が発生したときに「精算」します
贈与者の相続時は、「相続時精算課税」での贈与財産を加算して相続税を計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払います。
還付を受けることもあるのです!
相続時精算課税のメリット・デメリット
まずはメリットから
一度に多額の贈与ができる
2500万円までは贈与税がかかりません。
2500万円を超えたところからは、一律20%の贈与税がかかります。
財産移転がスムーズにできる
相続税対策にはなりませんが、早期に多額の財産を移転できます。
収益物件の贈与なら相続税対策につながる
収益物件、つまり、利益を生むビルやアパートなどの贈与であれば、贈与後の利益は贈与してもらった人(受贈者)のものとなるので、贈与者の財産が増えないので間接的な相続税対策になります。
値上がりする見込みの財産を贈与するには有利
値上がりする財産であれば、早く渡せば値上がり分の相続税は払わずに済むわけです。
分けにくい財産でも生前に移転が可能
相続時に遺産分割協議が難しい財産も生前に移転できます。
相続税精算課税のデメリット
一方、デメリットもあります。具体的には次のとおりです。
一定の直系親族間の贈与に限られ、かつ年齢制限がある
お父さんおじいちゃんお母さんおばあちゃん、子供孫までです。
あげる側は60歳以上、もらう側は20歳以上。
金額にかかわらず贈与税の申告が必要
あとから戻ってくることもありますが、最初は贈与税を納める必要があります。
贈与財産は相続時に小規模宅地等の特例が受けられない
「小規模宅地等の特例」が受けられる場合は、この制度だと損する可能性があります。
贈与財産は相続時に「物納」できない
相続税が現金で納められずに物納するしかない場合は、この制度は使えません。
その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
途中で暦年贈与には戻せません。
不動産の贈与の場合、移転コストが高い
相続であれば登録免許税0.4%のみですが、贈与の場合は登録免許税は2.0%となり、また別に不動産取得税もかかります。
デメリットを見ると、素人では到底判断のつかないことです。
そういう制度があると知った以上、自分たちの場合はどうするのがいいのかは、専門家の知恵を拝借するほうが賢明です。