遺言(公正証書遺言)の作成件数は、年間約8万件にすぎない。
この数字を見ると、「遺言」がない相続がほとんどという事がわかります。
ということは、残された者がどの遺産を誰がどう相続するか?の話し合い=「遺産分割協議」をする必要があるのです。
お父さんが亡くなって、お母さんが相続しても、ゆくゆくは子供同士の話し合いになるケースが多いのです。
自分が40代以降であれば、財産の承継方法を子供の立場からも考えておくのがベターです。
子供同士の話し合いは、結構他人=配偶者が首を突っ込んでくることで揉めるケースがあります。
そんなときに、水戸黄門の紋所ではありませんが、泣く子も黙る「遺言」があると「お父さんがそう思っていたんだったら・・」と鞘を収められるツールになることもあります。
遺言の注意点
1.すべての財産を列挙する
不動産は、所在地をきちんと書きます。
「○○の土地」ではなく、第三者が見てもわかるないようにすることが大事です。
2.遺留分は最大限考える
相続には、子供や奥さんなど最低限もらえる分け前=「遺留分」が民法で決められています。
「遺留分」すら貰えない遺言だと、「減殺請求」といって自分のもらえるはずの分をよこせ!という話になってしまいます。
自分の気持ちひとつだけでなく、遺された人たちの落としどころをつけられる内容にしてください。
3.特別受益・寄与分を考慮する
あまりどちらも聞きなれない言葉です。
特別受益とは、生前もらったもの。
たとえば、
●大学より上の教育のための資金
●買ってもらったマンション・宅地
などです。
でも、もらった側は忘れがちです。
寄与分とは
●介護をした
などです。
ただし、あまり細かいことを持ち出すと揉める原因になりますので、注意が必要です。
4.「付言事項」ははじめに書く
「誰に何を分けるか?」
どんな気持ちでお父さんがそれを決めたのか?がわかる一文があるだけでも、受け取る側の気持ちが違います。
また、裁判の「主文後回し」ではありませんが、誰に何を分けるという内容を最初に書かずに、まずお父さんの思いを伝えることで避けられる揉め事もあるのです。
たとえば、最初に三人兄弟で長男だけ80%あげるなんて遺言だったら、次男三男はどう思うでしょうか?
その一文の後で、真っ当な理由が書き加えられていても、不公平な結論から押し付けられていたら頭がカッカしていて受け入れ難い気持ちになると思いませんか?
あくまでも遺される側の立場になって、口では照れくさくてかった気持ちも添えてください。
そうすれば、気持ちをわかってもらえるはずです。
でも「遺言」には、法的効力はありません
よく勘違いするのは、法的効力と思い込んでいることです。
もちろん話し合いが決裂すれば、裁判になりますが、遺言は絶対ではないのです。
相続人が話し合って、意見が一致すれば遺言どおりでなくてもいいのです。
「死人に口なし」とはまさにこのこと。
生きているうちに、遺志を伝えておくための手段として、遺言はとても大事なのです。
兄弟仲よくと思うのが親心でしょう。
そのための大事な最後の手紙が「遺言」です。