「相続放棄」とはどういうことでしょうか?
プラスの遺産も、マイナスの遺産も、全て放棄するのが「相続放棄」です。
お父さんが亡くなった後、その子どもが「権利義務の一切を放棄します!」ということです。
ご自身でご商売や事業をなさっていたお父さんだと、負債があったりすることもあるのではないでしょうか?
実は、あくまでも「意思表示」だって知っていましたか?
「え?!あくまでも」
そうなんです、「あくまでも」なんです。
必ずしも借金が「チャラ」になるわけではないのです。
相続放棄は、厳密に言うと2回判断されるのです。
「相続放棄の申請をどっかにすれば、それで終わりじゃないの?もう追求されないんじゃないの?」
そう思いますよね。
私もそうだと思い込んでいました。
「2回判断される」とは、一体どこで誰にその判断をされるのでしょうか?
1回目 家庭裁判所
相続放棄の申述(しんじゅつ)を、書面に添付書類を付けて「家庭裁判所」にします。
家庭裁判所で要件を満たしていれば「受理」、満たしていなければ「却下」されます。
これは、割と受理されやすいのです。
なぜ受理されやすいのか?
相続放棄したい人だけの資料に基づいて、つまり、一方の人からの意見しか聞かないからです。
2回目 債権者の判断
(大阪高決昭和27年6月28日)
つまり、相続放棄の申述が受理されたとしても、相続放棄ができることが確定するわけではなく、あくまでも相続人の放棄の「意思表示」があったことが、公に証明されるだけなのです。
もちろん、債権者に「相続放棄申述受理証明書」を送付して「それなら結構です。」なら、めでたくそこでおしまいです。
法的知識がなければ債権者は、その相続人の相続放棄を認め、それ以上の請求をなさないことが多いと思います。
ところが、債権者が「あ、そうでしたか」と納得するとは限らないのです。
納得しなければ債権者から民事訴訟を起こされます。
民事訴訟になった場合は、相続放棄申述が受理されているからといって「有効」とは限らないのです。
「この相続放棄は無効だ、この借金は息子であるあなたが引き継ぐべきだ!」と言ってきたとしたら?!
民事訴訟の中で、争うことになります。
相続放棄の申述受理については、裁判でその効力を争うことができるのです。
相続放棄の申述が受理されたけど、その後に裁判になって、その結果、相続放棄の効力が認められずに借金の返済が認められるというようなケースは、実際多数存在しているそうです(大阪高裁平成21年1月23日・判例タイムズ1309号251頁他)。
自分が債権放棄する側でもされる側でも、知っておいたほうががいいことです。
ここから先は、いよいよ裁判ですので、弁護士さんにお願いする段になってきます。
相続問題に詳しくてキャリアがあって、経験豊富な弁護士さんを選ぶことをオススメします。