更新日2016/02/10 この記事は約 3 分で読めます。

一生懸命介護しているあなたへ 知らないと馬鹿を見るの法律の話

え~!知らなかった

相続の相談を持ちかけてくる人が、一番訴えるのは、どういった内容かご存知ですか?

「私が一番親に尽くしたのに、どうして兄弟たちは相続は平等だっていうの?」

親が亡くなって、話し合いを始めるも、親の面倒を見た自分のことを優遇してくれないという話です。
どうにも話し合いで決着がつかないと
「だったら戦う!出る場所に出て白黒つけてもらうおうじゃないか!」
「家庭裁判所に持ち込んで、判断してもらおう!」
という話になります。

裁判所に持ち込むと、相続はどうなるか?

どうして?

1.労力がかかります

民事と刑事では、裁判の労力が違います。
刑事事件のように、警察が調べてくれるわけではなく、自分で証拠を出して、証明する(今までの環境や事情を細かく説明して、証拠を出す)という気の遠くなるような作業なのです。
ちなみに、労力と時間だけでなくてお金もかかります。

2.親の面倒を見た人に優しくない法律

介護
相続には「寄与分」というものがあります。
「寄与分」とは、相続人の公平をはかるために、昭和55年に導入されたものです。
たとえば長男が田舎の実家で家業をお父さんとがんばってやってきたのに、都会で父親の面倒はみずサラリーマンをやってきた次男と平等ではおかしいということで、相続分以上の相続ができるという仕組みが作られたのです。
しかし「寄与分」には明確な物差しがないのです。
「これだけ親の介護をしてきたのに、相続ではチャラって一体どういうことなんでしょうか?」
そういいたくなる気持ち、わかります。
実際多いのは、そういう話です。
でも法律は救ってくれないのです。

なぜか?
「相互扶助」の精神があるからです。
「親があなたを育ててくれたように、親の面倒を見るのは当たり前」という法律なのです。
親の面倒をぜんぜん見なくても、法律上非難されることはありません。
面倒見た子供も見ない子も、法律的には平等なんです。
法律に「面倒みた子が遺産相続いっぱいできますよ」とは書いていないんです。

それが現実なんです。
ある意味現実に即していない「民法」です。
法律に情状酌量もへったくれもありません。

もし、寄与分を考慮してほしいとなると、どれだけの期間どれだけのことをしてきたかを証明しなくてはならなりません。
具体的には、どれくらいの介護レベルで、どれくらいお金を負担して、時間を犠牲にしてきたか?
診断書や精神鑑定書、領収書などが必要となってきます。

じゃあどうすればいいの?

解決
いくら法律的に介護をした分が考慮されていないからといって、さじを投げなくても大丈夫です。
方法はあります。

1.親に遺言書を書いてもらう

でもなかなかまだ浸透していないのが現実です。
介護する段になって弱ってくると、自分の老い先が見えてきます。
そんな親に、遺言書の話を切り出すのは至難の業です。

2.相続人みんなで話しあう

親という「重石」がある時、つまり親が亡くなる前に、兄弟で話し合うことも大事です。
縁起でもない!という兄弟もいるかもしれませんが、遅かれ早かれ絶対に訪れるのが「相続」で、誰も避けて通ることはできません。

話し合いが決裂した場合、家庭裁判所に持ち込む

家庭裁判所での相続の調停は増えていて、最近20年で2倍の件数になっています。
さらに、金額としては、5000万円以下での争いが7割だということ。
金持ちけんかせずは、当たっているのです。

判例は?

寄与分を認められた:10%以下
重い認知症のお父さんの介護を10年以上した人の寄与分が一日あたり数千円という判決もあるくらいです。
残念ながら、公の場で白黒はっきりつかないのが現実です。

結論:遺言書しかない

確かに、話ずらいことかもしれません。
いいきっかけがあります。
おじいちゃんおばあちゃんが亡くなった年より10年若い年に親がなったら、話のきっかけを作るチャンスです。
誰でも先延ばしにしたいことではありますが、ぜひトライしてください。
一度話せば、つき物が落ちたようにすっきりするのですから。