「お父さんが亡くなった後、お金を引き出すのに大変だったのよ」
あなたはこんな話を聞いたことがありますか?
「亡くなった人の銀行口座は凍結される」
そんな話も聞いたことがあると思います。
亡くなった人(被相続人)の預金口座は、金融機関が被相続人の死亡を確認した時点から、凍結されます。
誰かが勝手に貯金を引き出すことがないようにする措置です。
凍結された預貯金の払い戻しができるようにするための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。
遺産分割協議「前」の場合
どう遺産を分けるかが決まる前でも、下記の書類があれば引き出せます。
- 払い戻し請求書(金融機関所定のもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 亡くなった人(被相続人)の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 亡くなった人(被相続人)の預金通帳と届出印
遺産分割協議「後」の場合
遺産分割をがどうなったかで必要書類が変わってきます!
遺産分割協議に基づく場合
遺産分割の話し合いがまとまったときの必要書類です。
- 払い戻し請求書(金融機関所定のもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 亡くなった人(被相続人)の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 亡くなった人(被相続人)の預金通帳と届出印
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
調停・審判に基づく場合
調停や裁判が絡んだ場合は、下記の書類が必要になってきます。
- 払い戻し請求書(金融機関所定のもの)
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(家庭裁判所で発行してもらえます)
- 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
- 亡くなった人(被相続人)の預金通帳と届出印
遺言書に基づく場合
遺言書に則った場合は、遺言書の提出もします。
- 払い戻し請求書(金融機関所定のもの)
- 遺言書
- 亡くなった人(被相続人)の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
- 遺言で財産をもらう人の印鑑証明書
- 亡くなった人(被相続人)の預金通帳と届出印
何で銀行は口座の名義人が死んだことがわかるの?
区・市役所へ死亡届を提出しても、役所が銀行に連絡することはありません。
また死亡情報が自動登録される銀行間ネットワークなどのシステムもありません。
でも銀行は、独自に口座名義人が死亡した事実を把握しています。
どこから情報を手に入れるのでしょうか?
新聞のお悔やみ欄、死亡広告、親族の方から連絡が入る場合、外回りの営業マンが亡くなったことを耳にするケースもあります。
死亡後すぐに銀行口座が凍結されるとは限りません
銀行は預金口座の名義人が亡くなったことを知った時点で口座を凍結し、その口座から自由にお金を引き出せないようにします。
銀行も、口座名義人の死亡をすぐに把握できませんし、すぐに預金口座が凍結されるとは限りません。
お金の出入りは、通帳を見ればわかってしまいます
「じゃあバレないじゃん。」
確かにそうかもしれませんが、分割協議の際に通帳の履歴は皆が見ます。
さらに、相続税の税務調査が入った場合には、調査官は被相続人が亡くなる直前の預金の動きは必ずチェックします。
葬式代は引き出してOKです
銀行から出したお金を「葬式代」に使った場合は、相続税の計算上、相続財産からマイナスできる、つまり、相続税が課されません。
葬式代以外の目的で預金を引き出す場合、相続税よりもむしろ遺産相続争いの原因となることがあります。
後ろめたいお金の出し入れにならないように、相続人同士で事前に話をしておくことが懸命です。
手続きの注意点
手続きのための必要書類は多く、何度も金融機関に通わなければならないケースも多く見られます。
引き出すための用紙の書式は金融機関によって違います。
複数の銀行口座がある場合は、それぞれの金融機関で必要な書類を集めなければなりません。
サラリーマンが平日仕事を休んで手続きするにしても簡単な作業ではありません。
銀行の窓口が空いている時間は9-15時。
代行してやってくれる司法書士さんもいますので、時間がなかったり遠方である場合はそのようなサービスを使う方法もあります。